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『ライク・ア・ローリング・ストーン』ボブ・ディラン




はい、どっと・もーにんぐ(=^o^=)やまねこ通運でございます。

孤独な魂の旅について考えています。考えてみれば、やまねこ通運の歩んだ道そのものが

「ローリング・ストーン」かなと思います。「ころがる石には苔が付かない」とは

「労して功なし」ということと同じで、あまり功利的に生きてこなかったようです。

さて、今日はヘルマン・ヘッセです。

『荒野の狼』ヘルマン・ヘッセ著

中年の孤独な男ハリー・ハラーは精神的な分裂状態に悩まされています。普通の社会生活に適応
できず、自分のなかの「荒野の狼」は苦悩と不幸の源になり、阿片製剤入りの鎮痛剤をあおり、
ときおりどうしようもない死の誘惑に駆られるのです。
出口のみつからない孤独な男、ハリ・ハラの前にヘルミーネという魅惑的な女性があらわれます。
そして彼女の導きででダンスと愛技の名手マリア、サックス吹きのパブロに出会い、、めくるめく
異世界としての「魔術劇場」に招かれます。
壮年ヘッセが描いたファンタジーとして七十年代、ヒッピーたちのバイブルともなりました。 

夜の街の雑踏を逃れたハリ・ハラは不思議なポスターを街路の壁に見つけます。

「ようこそ、魔術劇場へ」

『魔術劇場』は、夜の盛り場の中にありながら、誰も知らない隠れた通路を通らないとたどり着く
ことが出来ない世界です。
ちょうどハリー・ポッターのプラット・フォームのようなものなのでしょう。
そして、そこへの導き手ヘルミーネという魅力的な女性の手ほどきを受けながらハリ・ハラは
異空間である魔術劇場に導かれてゆきます。
その陶酔的でなまめかしく、魅惑に満ちた世界は小市民的で抑うつ的・理性的で退屈なハリ・ハラ
の魂を灼熱の体験で変容させる秘儀空間のシンボルとして描かれています。
男性は、いつも心のどこかで魂の小道を通って内なる世界の導き手・・ヘルミーネとの出会いを
求めているのかもしれません。
それは、作者へルマン・ヘッセの苦悩に満ちた魂の旅とその救済を描いた小説でもありヘルミーネ
という名前は、ヘルマンの女性形名詞であることにも、象徴的な意味が込められています。
内なる分裂に苦しむヘッセが女性性を求め、やがて失われた世界を統合してゆくプロセスを象徴
しているのでしょう。
魂の旅の途上で出会う女性性の魅惑は、男性の異なる魂の側面であり、男にとっては一度失われた
世界を回復する癒しと救済でもあるのでしょう。
女性性は、より自然と存在の次元に近いあり方を示していると考えられています。
心理学者C.Gユングは、アーキタイプ(元型)として男性が無意識領域に抱く女性性をアニマと呼んで
、魂の分裂の救済者となることを暗示しています。
これは、女性に生まれた人は、大いに喜ぶべきことかもしれませんね。
ナチュラルで、大地のような女性性との出会いを通してしか自身の全体性を知ることができないのが
男性と言うものかもしれません。 

谷神は 死せず       谷間の神は不死である
是を玄牝という       人はそれを神秘なる女性と言う
玄の亦玄 衆命の門     万物はこれから来たり、これから生まれる  『道徳経 老子』


ヘルマン・ヘッセ(1877~1962) 南ドイツの小さな町カルヴの宣教師の息子。時計の歯車磨き助手、書店員などをへて、「郷愁」で広く認められて作家に。作品はすべて自伝的で、苦悩をへてある種の解脱へと到達する内容が特色となっている。代表作「郷愁」「車輪の下」「デーミアン」「荒野の狼」「知と愛」「シッダールタ」「ガラス玉演戯」。